四年前、お世話になっている方の奥様が亡くなられ、遺品整理に立ち会う機会がありました。その方は陶器やガラス、金属でできた装飾品がお好きで、私から見ても一風変わった、それでいて優雅で美しい品々をご自宅に飾っておられました。それらはご主人のお仕事柄、赴任地のイギリスで少しづつ集められたそうです。
もしよかったら使ってやってよ、というご主人のご厚意で、遺品の中から青いガラスの花瓶を譲り受けることになりました。

澄んだ池をのぞき込んだように、深みのある青、控え目にあしらわれた絵柄‥‥オーラを放っているというか、とにかく存在感のある花瓶です。お花がなくても、花瓶単体だけでインテリアとして完結している独特の風情に、すっかり惚れ込んでしまったのです。
亡くなった奥様の目利きぶりを想いながらも、今まで全く接点がなかった品が、私の手元に訪れたご縁の不思議さに、妙におかしくなりもしたのでした。今まで大事にされていた人の想いと、歴史を重ねながら伝えられていくモノは、大切に次の世代へわたしていきたいものですね。

そして今年。桜の季節になって、今度は奥様のご主人が亡くなられたのです。ふたたび遺品整理のお声がかかり、二度目のお手伝いをしたのですが、古いアルバムを拝見していたら、この青い花瓶が写真の隅に写っていたのを発見しました。懐かしいブラウン管のテレビのかたわらで、今と変わらない存在感を放っていた花瓶の凛とした姿。イギリスの大好きだった素敵なご夫妻が、お気に入りのモノに囲まれた、静かでおだやかな暮らしぶりが想像されて、心からご冥福を祈りたい気持ちになったものでした。
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先日、銀座に行く用事が出来たので、久しぶりに“アンティークモール銀座”へ立ち寄りました。熱心に足を運んだ若いころが思い出されて懐かしく、気持ちが解きほぐされてリラックスしてゆくのがわかります。こういうときは本当に自分の趣味、自分が好きな場所があることを感謝したくなります。
そこでふと目に留まったのは、二つの蝶が描かれた空色のお皿。裏面には「M」の文字と「Hand Painted」、「NIPPON」の刻印が…。オールドノリタケでした。花瓶の横に飾ったら、ピッタリなんじゃないかしらと、ピンとくるものが。だって、先に亡くなった奥様が、ご主人を迎えにきているような構図に見えて、しんみりしてしまったからです。同じお家の遺品整理に二度もお邪魔したせいか、思い入れが深くなってしまったのかもしれません。

青い花瓶には黄色い花を活け、横に蝶々のお皿を飾ったら、亡くなったご夫妻が笑顔で語りかけて下さっているような気がしました。

さて、今日から「令和」がはじまりました。良い時代にしていきたいですね。