手に取るとずっしりとした重みを感じる、真鍮製のペーパーナイフ。酸化して黒ずんでしまったのでちょっと見づらいかもしれませんが、上の縁には左を先頭にした流線形の列車が刻まれ、下には“あじあ”の文字と、「亜細亜」の「亜」をデザインした赤いテールサインがあしらわれています。

ご存知、旧満州国を走った特急列車“あじあ号”のノベルティーです。この列車が大連から新京(現在の長春)まで運転を始めたのは、1934(昭和9)年11月1日のことだったそうです。このペーパーナイフも、そのころ南満州鉄道によって配布されたものとみてよいでしょう。
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このペーパーナイフに出会ったのは、昔の文房具や小物に惹かれて、あれこれと集めはじめた初期のころ。目について手に取った瞬間の、わくわくドキドキした気持ちは今でも忘れません。ペーパーナイフで列車をあしらったものを目にするのも初めてでした。
今でこそネットオークションの普及で、お家にいながらにして古物と出会える時代になりましたが、このペーパーナイフを見つけた20数年前は、まだ“足”でかせがなければ探せない時代。それだけに感動も大きくて、歴史のカケラを発掘したような、大発見したような気持ちになったっけ…。

指先に重みと真鍮の手触りを感じながら、“あじあ号”ペーパーウエイトをひさしぶりに灯りの下に出して眺めていると、若いころのことが思い出されて、なんだか、励まされたような気がしました。そして、ここまで自分を心豊かにしてくれた古いモノたちに、感謝の気持ちがわいてきたのです。
こんな気持ちになるのは、季節のせいかもしれません。娘の小学2年生最後の保護者会も終わり、4月からの新年度が近づいたことを感じさせる時期。私も当たり前ですがひとつ歳を取り、今年はさらに改元もあって、5月より新元号もはじまりますよね。節目ともいえるこの1年、心身ともに健康でがんばっていきたいものですね!